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【介護のおしごと #001】これまでにない"介護のカタチ"を色んな人と協力して創りたい(浦郷香里さん)

介護のおしごと

介護をお仕事にしている方のリアルな声を不定期で発信する『介護のおしごと』。

記念すべき第1回は介護士として働く浦郷香里(うらごうかおり)さんです。

浦郷さんと知り合ったのはちょうど1年前くらいです。知り合うようになってからは一緒に能古島でバーベキューをしたり、リレーマラソンに出場したりとプライベートで親しくさせてもらっています。今夏には福祉を学ぶため、福祉大国デンマークに留学予定ということで、友人というよりは介護士の浦郷さんとしてお話を伺いました。(以下、敬称略)

介護士の資格を取得したものの介護士として働きたくなかった

浦郷さんは現在デンマーク留学に向け現場からは離れていらっしゃいますが、介護士として6年間特養(特別養護老人ホーム)で働いていらっしゃいました。

佐々木「介護士を目指したきっかけはなんだったんですか?」

浦郷「高齢化と言われてるし介護士なら仕事が失くなることないだろうって。でもね、介護士の資格を取ったんだけど最初は介護士として働きたくなかったの。」

介護士の資格を取ったはいいものの、浦郷さんの中で、介護はネガティブなイメージの方が強く介護士として働く自分を想像できなかったらしいです。資格があるならいつでも介護士として働けると考えた浦郷さんは、介護士よりも本当にやってみたい仕事に挑戦することを決め、とりあえず介護士をしながら夢を目指そうというスタンスで介護の仕事をスタートさせたそうです。

“介護する”ということの意味を教えてくれた上司

浦郷「職場の上司に本当に恵まれたんだ。その上司じゃなかったら介護士はとっくに辞めてたかもしれないな。」

夢を目指すまでの”つなぎ”として考えていた介護士。施設の職員としてショートステイと入所を担当するようになった浦郷さん。そこで出会った上司が浦郷さんの”介護の価値観”を大きく変えてくれたそうです。

浦郷「私の上司は厳しいって聞いてたの。でもね、一緒に働いてて気づいたのは厳しくなるときは必ず理由があるってこと。利用者さんのための介護になってない時はとっても厳しかった。」

介護職員として働き出し様々な業務に取り組むと、1人1人の利用者さんと向き合うということが難しいときもあります。おろそかになってしまうときもあります。そんな時、浦郷さんの上司は本当に利用者さんのためを思って取り組んだかと厳しく指導なさったそうです。

浦郷「利用者さんのために職員みんなで、チームとして、1つ1つの介護を真剣に考えて取り組んでいくことを学んだの。介護って誰かのためにこんなに真剣になれる仕事なんだって気づくことができたの。」

“今”という時間はずっとずっと続かないことを学んだ1つの死

ショートステイで担当になった方のケアプランの作成を任されるようになった浦郷さん。

担当になった利用者さんは要介護度も低く、元気な方だったそうですが、ある日突然食事を摂らなくなったそうです。食事以外で栄養が摂れるようケアプランを流動食に変更したり、様々なことを試したそうですが一向に食事を摂ってくれなかったそうです。

浦郷「食事が摂れないのはちゃんと理由があったの。実は食道ガンだったの。食道ガンが進行していて、気づいたとき、食道は水しか通らないくらいの太さになってたの。」

その後、食道ガンにより利用者さんは亡くなったそうですが、浦郷さんは自分を責めたと言います。

浦郷「食道ガンに気づけず、利用者さんに食事という名の”痛い”行為を繰り返させてしまった。もっと早く気づけてれば食事の内容も変わったと思うし、もっとコミュニケーションが取れていれば何故食事を摂れないか話してくれたかもしれない。自分の知識の無さとケアプランの大切さを痛感した。」

ショートステイで看取りを経験することはあまりないそうなのですが、 この1つの死を通して”今”という時間がずっとずっと続くことはないことを強く感じたそうです。

“今”元気だからって明日も元気だとは限らない、”今”健康だからってずっと健康だとは限らない。1日という時間は本当にかけがえのない時間だからこそ、関わる時間を大切にしたいし、かける言葉1つ1つを大切にするようになったと力強く話してくれました。

できないことを補うのでなく、できることを維持する介護を目指す

デンマークに留学するまでの時間、留学後の現場復帰を考え様々な施設を見学している浦郷さんは先日見学に行った施設で”介護の価値観”が変わったと話してくれました。

浦郷「今まで介護って身体介護だと思ってたけど、そうじゃないってある施設を見学して思ったの。できないことを補うんじゃなくて、できることを維持することこそ、利用者さんのための介護なんだって思った。」

その施設では利用者さんができることに注目し、利用者さんに役割を与え役割を発揮して地域の役に立てるようコーディネートするという介護のスタイルを実践しているそうです。役割を持ってもらうことで利用者さん自身が生きがい・やりがい・楽しさを感じるようになり、地域の人と交流するために外出するようになったそうです。

その光景を目の当たりにし、利用者さん自身が自己選択できる介護を目指していきたいと話してくれました。

浦郷「介護って施設に預けるだけが介護じゃない。在宅を望む方もいる。だからこそ、利用者さん自身が望む形で介護できる状態を作っていきたい。デンマークでは在宅介護も多いから、在宅介護の在り方とかも自分の目で見て、感じてきたいと思ってる。」

介護士だけが介護するんじゃなくて、いろんな人と一緒に介護してきたい

佐々木「介護士 浦郷香里と話をするのはほぼ初めてでしたけど、とっても力強く、しっかりと仕事と向き合っていらっしゃるなあと強く感じました。最後に、こんな人と一緒に介護したい、こんな介護を実現していきたいというのがあれば教えてください。」

浦郷「もうね、介護士だけが介護をする時代じゃないと思うの。いつ介護をするという立場になるかわからない。だからこそ、いろんな人と一緒に介護に取り組んでいきたいな。」

佐々木「いろんな人と一緒にというのは他業界の人とという意味でしょうか?」

浦郷「もちろん、それもあるよ。最近の実例でいうとパティシエの子が施設に定期的に来てくれて、利用者さんにケーキの作り方を教えて、実際に作ってもらったりしたよ。介護士だけじゃできなくても、他業界、他業種の人と協力すればできる介護もあるよね。

あとは地域の人という意味もあるの。やっぱり地域コミュニティって大事なの。地域の人の協力なくして介護は実現していかないと思ってる。地域の人に”介護”についてや”認知症”について理解してもらって、地域の人と一緒に利用者さんを見守っていきたい。認知症について考える場を用意したり、ただ話すだけじゃなくて劇みたいなものを通して伝えるっていうのもひとつの方法かなって考えたりしてるよ。」

佐々木「確かに誰でも介護をする・される状態になるかわかりませんもんね。介護は他人事ではないことを認識して、実現していく必要がありますね。」

浦郷「喋りすぎたかなあ?こんな感じで大丈夫?」

佐々木「まったく問題ないです!本当にありがとうございました!」

介護について1時間みっちりと語ってくれた浦郷さんが今取り組んでいるプロジェクトが「RUN伴」です。認知症になっても安心して暮らせる地域を目指して認知症の方と一緒にタスキを繋ぐ列島リレーです。

九州を走るのは10月で、誰でも参加、寄付ができるそうです。

是非下記をリンクをご覧ください。

浦郷さんは、最後の最後まで力強く、そして終始笑顔で介護について話してくれました。

介護というとネガティブなイメージが先行しがちですが、実際に介護に取り組んでいる人は目の前の人に常に全力で向き合い、とても前向きです。介護は誰でもできる仕事ではありません。しかし、誰でも介護に携わる可能性はあります。

このブログでは引き続き、介護従事者の方にインタビューを実施し、介護の仕事のリアルな部分を発信できればと考えています。

介護について考えるきっかけになれるように。